青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

オン・ザ・ロード

ブックエンドに並べてあった本を全部読み終えたので、図書館に出向いた。予約してあった本がとどいたという連絡が留守電に入っていたのだ。ジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』。そうビートニク世代の聖書『路上』だ。池澤夏樹編の世界文学全集では、たしか第一巻ではなかったか。こちらは、そのスクロール版。スクロール版というのは、ケルアックが、原稿をタイプ打ちするのに、紙を一枚一枚入れ替えていたら執筆のリズムが途切れてしまうからという理由で、タイプ用紙をロール紙状に貼り付けてしまったものを指している。簡単にいうと刊行版に対する草稿にあたる。ただ問題はそれだけでなく、草稿であるために加筆や訂正する前の元原稿(刊行版では名前が変わっている盟友ギンズバーグバロウズが実名で登場する)をできるかぎり尊重して刊行した版であるということだ。研究者には、これほど面白い出版物はないだろうし、単なる一読者にとっても比較して読める楽しみがある。新旧訳の比較や原文と翻訳の比較が好きな向きには、こんなうれしい本はない。さっそく読みはじめたところだが、スピーディーな展開、開けっぴろげな作風に大いに気をよくしたところだ。お盆ということもあって夏休み気分でいるところ。ヒッチハイクでアメリカをニューヨークからデンバーまでやってきたところだ。これから先が楽しみになってきた。
スクロール版 オン・ザ・ロード
さて、借りてきた本をもう三冊紹介しよう。モンテーニュ作『エセー』の1〜3巻である。実は、これも最新刊である4巻をリクエストしておいたのだが、図書館から電話があって、旧訳の本が閉架図書の方にあるがそれでは駄目かという問い合わせだった。実は以前にも旧訳で読んでみたことがあるのだが、如何せん訳が古くて読んでいても愉しくない。(実は4巻はもう読んだのだが、この訳で読むとモンテーニュはいつの人だろうと思うほど。)ぜひ新訳でとお願いしたところ、4巻だけではという返事の様子で、購入は無理かなと思っていたのだけれど、なんと大英断で、1から4巻まで買ってくれていたのだ。おそらく、あまり読む人はいないだろうから(面白いことは保証するんだけど)、これはぜひ借りてこなくっちゃ、ということで今日借りてきました。盆の休みもあと少し。それまでに読めるかどうかは気がかりだけれど、ブックエンドにでんと並んだ姿は壮観である。まあ、モンテーニュとケルアックという取り合わせはちょっと気になるところではあるけれどね。
エセー〈1〉