青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

「ニコ、そんなに太ったかなあ?」

 

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血液検査の結果、数値が安定したので、前々回の通院日から点滴をはずして投薬のみの治療に切り替わっていた。それはいいのだが、もうこれで安心かと思った次の通院日の前夜、妻が後肢の異変に気がついた。肢に力が入らないのか、時おり腰がぐにゃっとくずおれるようになるのだ。調子のいい時は二階へも往き来するし、ゆっくりとなら歩き回れるが、以前のように椅子の上にのってきたり、すばしっこく動き回ったりすることができない。

そのことを相談すると、医師は肢の状態については脳から来るものと診ているようだった。血液検査のなかで一項目だけ数値が高く、それがFIPを疑わせる原因になっていたのだ。黄疸はすっかりよくなり、食欲も回復したが、近頃ではめっきり運動量が減り、おもちゃにも前足だけでじゃれるばかり。ここ何日かは座布団の上を膝掛けで覆った玉座が定位置になっており、今朝も朝ごはんの後のリラックスタイムは上向きになって顎の下を撫でさせて悦に入っていた。

安心しているところを辛いけれど、薬が切れたので二週間ぶりに通院しなければならない。キャリーに入れるとめずらしく早くからなき声を出した。めったなことでは鳴かない子で、よほどいやだったにちがいない。なだめすかせて医者に向かった。病院はわりと空いていて、すぐに診てもらうことができた。体重が3,5キログラムで少し増えていた。問診をしながら看護師のSさんが爪を切ってくれる。素直に切らせているので感心すると、Sさんは「ニコちゃんはシャンプーもさせてくれるし、優等生だものね」と、ほめてくれる。手のかからない子なのだ。

後から診察室に現われたK医師は、この前唯一高かった血液検査の数値と今回の数値を見比べて、標準の範囲に収まっていると教えてくれた。ほぼ十分の一にまで下がっている。ひとまずFIPの発症は考えなくていいということだ。となると、腰砕けの原因は何か、ということになる。脳による麻痺なら京都の病院、神経によるものなら名古屋の病院でMRIの検査を受けるしかないが、その前に最初の日に撮ったレントゲン写真をもう一度見て、股関節の骨の形が左右でちがうことをみつけた医師は、今度は体重の増加による肢への負担を疑ったようだ。

十月初めに3,15キログラムだったものが3,5キログラムに増えている。一ヶ月で一割増は太りすぎだ。ダイエットをする必要がある、とのこと。病気が重く、体力が落ちていた頃は少しでも食べてくれるとうれしくて、ついつい余分に食べさせてしまった。このごろは、すっかりそれが当たり前になってしまって、ちょっと多いけど、まあいいか、となっていたのは確かだ。反省して、一日のカリカリの量を50グラムから35グラムに減らすことにした。

前回から一日おきになっていたステロイドの投与がなくなり、二週間後に薬をもらいに行くときはニコは連れて行かなくてもいい。今日も血液検査はしなかったから、ニコは痛い思いをしなくてすんだ。げんきんなもので、往きにあれほどないて、待合室でもまだないていたのに帰りの車ではすっかりおとなしくしていたニコは、玄関でキャリーを開けるなり、飛び出て二階に駆け上がっていった。

午前中は曇りだったが、午後はすっかり秋晴れとなった。妻のベッドに寝転んだニコは全身に日を浴びて長々と伸びをしている。顎に手をやるとぐるぐると喉を鳴らして仰向きに寝転がる。片手で日を浴びたニコの顎を撫でながら、もう一方の手でおなかのあたりの柔毛を撫でてやる。ダイエットで肢の負担が軽減するならそんな簡単なことはない。少々かわいそうだが、心を鬼にしてここしばらくは食事制限に励もうと思う。