青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『ナボコフ 訳すのは「私」』 秋草俊一郎

外国語で書かれた小説が好きだから、翻訳という仕事にはふだんから世話になっている。もし、翻訳家という人たちがいなかったら、文学の世界は語学に堪能な一部の人をのぞき、ずいぶん狭いものになっていたにちがいない。しかし、その一方で、他国語に翻訳さ…

『ロード・ジム』 ジョゼフ・コンラッド

一度汚してしまった自分の名を、生涯をかけて償うことで取り戻すことができるのか、というきわめてシンプルな主題を持つ小説である。二年の養成期間を経て、晴れて憧れの船乗りになったジムは、航海中倒れてきた円柱の下敷きになり怪我をし、とある東の港に…

『V.』 トマス・ピンチョン

ピンチョン=難解というイメージが先行しているようだけれど、そんなことはない。一つ一つの章で区切りをつけて読みすすんでいけば特に理解し難いところはない。登場人物の多さと錯綜する二つの時間軸の存在が単に理解を妨げているだけだ。一度読んだだけで…