青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『LAヴァイス』 トマス・ピンチョン

ピンチョンが2009年に発表した最新作だが、背景となる時代はなぜかシックスティーズ。『ヴァインランド』からピンチョンを読み始めた評者のような読者には、懐かしい古巣に戻ったような思い。50年ぶりに再結成されたビーチボーイズは、相変わらずブライアン…

『股間若衆』 木下直之

『世の途中から隠されていること』を読んで以来、この人の書くものには注目してきた。ただ、今回の著作にはいささか唖然とさせられた。『股間若衆』とは。すでにお気づきの方もおられようが、仮名で書けば「こかんわかしゅう」。そう、「古今和歌集」のもじ…

『災いの古書』 ジョン・ダニング

もと警官で現在は古本屋を営むクリフ・ジェーンウェイが主人公のシリーズ物第四作。インターネットが普及し、特に経験がなくとも金さえあれば誰でも本を扱えるようになった。各地の古本屋に足を運び、自分の目で掘り出し物を探し当てては店に出す。そんな商…

『失われし書庫』 ジョン・ダニング

元刑事で、今はデンヴァーで古書店を営むクリフ・ジェーンウェイを主人公とする古書ミステリシリーズ三作目。二作目の活躍で、思わぬ大金を手にしたクリフは、リチャード・バートンの稀覯本を競り落とす。ところが、それを聞きつけた老嬢がクリフの店を訪れ…

古書薀蓄ミステリ

積読してあった本を読んでしまったら、ストックがなくなってしまった。こういうときの頼みの綱である市立図書館が、運の悪いことに蔵書整理中とかで一週間の閉館中である。仕方がないので、以前に読んだ本を手に取ったところ、中身を忘れていたのだろう、ミ…

類語辞典

言葉が出にくくなった。ひと頃なら、思い出そうとする努力もなしに、言葉があふれ出してきたものだが、昨今では何かを言おう、書こうとすると、まず心に浮かんだことを言い表す言葉を見つけなければならない。努力を怠れば、いつも同じ言い回しの繰り返しに…

『みみずく偏書記』

由良君美といえば、今では、その著書もほとんど絶版となっているが、70年代怪奇幻想文学の一時的なブームが起こったとき、仏文学の澁澤龍彦、独文学の種村季彦と並び、英文学の先達として脚光を浴びた一人。代表作に『椿説泰西浪漫派文学談義』がある。もと…