2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧
台湾の若い作家の短篇集である。少し前に読んだ呉明益の『歩道橋の魔術師』もそうだが、近頃、現代台湾文学の紹介が相つぎ、それもどの作品も高水準を保つ。台湾は多言語社会でいくつもの言語が飛び交う。作中では多様な言語を駆使する甘耀明は、父が客家(…
フロリアン・キルデリーの両親は画家だった。親は息子に期待したが、彼にその種の才能はなく、両親の死後相続した十二部屋もある屋敷を保持する経営の才能もなかった。借金返済のために売り払ってしまい外国にでも旅立とうと考えていた。そんな時、部屋の隅…
何故かナボコフの作品の中でこれがいちばん好きかもしれない、という気がしてくるから不思議だ。主人公は、ほぼ作者ナボコフ自身の経歴をなぞった亡命ロシア人の大学教授ティモフェイ・プニン。新大陸アメリカのウェインデル大学でささやかなロシア語講座を…
サリンジャーのファンや愛読書の中に『キャッチャー・イン・ザ・ライ』その他を挙げている人は読まないほうがいいかもしれない。読めば、これまでと同じような気持ちで作品を読み返すことが難しくなるだろう。たしかに小説と作者は別物だ。「文は人なり」な…
ディレイニーと並んで60年代アメリカSF界を代表する作家ロジャー・ゼラズニイの初期中短篇集である。全15篇の中には、ひとつのアイデアのみで成立する超短篇も含まれているが、その持ち味を堪能しようと思えば表題作を含む中篇に読み応えのある作品が多…