青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『ベスト・ストーリーズⅡ 蛇の靴』 若島 正篇

若島正氏編による、新『ニューヨーカー短篇集』、『ベスト・ストーリーズ』全三巻の第二巻。時代的には1960年から1989年までの三十年間をカバーしている。二代目編集長ウィリアム・ショーンが辣腕を振るった『ニュ-ヨーカー』がどんな雑誌だったかというと…

美しい日和は、あといく日続くだろう

毎日、真夏のような好天が続いている。気温は高いが、湿度は低い。窓を開け、網戸にすると、心地よい風が部屋のすみずみにまで流れこんでくる。 ニコは近ごろ、よく書斎にふらっと入ってくる。椅子の上で寝ていることもあれば、窓辺に寝そべることもある。窓…

ただいま厳重警戒中

天気がいいので車を洗った。拭くピカで磨き上げたら、どこかに出かけたくなった。 昨日テレビで「ブラタモリ」を見ていたら、横山展望台からサミット会場になる賢島がよく見えた。聞くところによると、全国の警察官の一割がこの地方に集結しているとか。今日…

『エセー 7』 モンテーニュ

『エセー』の最終巻。晩年のモンテーニュが、肉体的にも精神的にも、意気盛んであったことがよく分かる。国は宗教戦争のさなかにあり、自身もそれにかかわりながら、塔屋の書斎にこもって『エセー』を書いている時は、いつものモンテーニュであり、それは最…

「トリミング」

ずいぶん長い間ニコのことを書かなかった。ニコは元気です。でも、いろいろあった。薬の投与を中止して、様子を見ることにしてからというもの、毎月血液検査に通院を続けていた。体重も3.5キログラムを超えることなく保っていてこちらは安心していた。 先…

『独りでいるより優しくて』 イーユン・リー

物語は小艾(シャオアイ)の葬儀のシーンからはじまる。この章の視点人物は三十七歳の泊陽(ボーヤン)で、彼は小艾の母の代わりに火葬場に来ている。小艾は伯陽より六歳上だったが、誤って或は故意に毒物を飲んだせいで、二十一年間というもの病いの床にあ…

『64』上・下 横山秀夫

三上義信はD県警察本部警務部秘書課調査官<広報官>。肩書きは警視。去年までは捜査二課、つまりは刑事部に所属していた根っからの刑事である。強面と刑事部出身という本籍効果を買われて警務畑に来たが、本心は二年で刑事部に戻ると決めていた。捜査一課、…

『黒い本』 オルハン・パムク

弁護士のガーリップは突然家を出た妻リュヤーの行方を捜してイスタンブールの街をさまよう。妻の行きそうな場所に電話をかけるがどこにもいない。前夫の家にまで押しかけるも相手はすでに再婚していた。別件で妻の義理の兄であり、自分にとって従兄にあたる…