青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『フライデーあるいは太平洋の冥界 トゥルニエ/黄金探索者 ル・クレジオ』

危機的状況に見舞われているというのに、マスコミは知らぬ顔を決め込んで、退屈な日常の風景を飽きもせず垂れ流している。大衆は大衆で、よせばいいのに狭い日本の中を右往左往、旅に出ては感染者を増やしている。他でもない、鳥や魚が人を恐れることなく近…

『影を呑んだ少女』フランシス・ハーディング

舞台は十七世紀の英国。いわゆる清教徒革命の時代。主人公の名はメイクピース。変わった名だが、ピューリタンが多く暮らす界隈に住むにあたり、母が改名したのだ。メイクピースは眠りにつくと自分の頭の中に幽霊が入りこもうとしてくる恐ろしい夢を見る。叫…

『アコーディオン弾きの息子』ベルナルド・アチャガ

<mother tongue>という言葉がある。「母語」という意味だが、「母国語」という訳語もある。真ん中の「国」だが、ほんとうに必要だろうか。半世紀も前のことになるが、高校の修学旅行で南九州を旅したことがある。市の方針で行き先が隔年で北九州と南九州に…