The Long Goodbye
第15章のマーロウは、失踪したウェイドが残したたった一つの手がかり、Vという頭文字を持つ医師の情報を求め、大手機関に勤める知人を訪ねる。しがない私立探偵の目から見た大手同業者のオフィスに注ぐ辛辣な視線が印象的な場面だ。 この章も大きな異同は…
松原氏の『3冊の「ロング・グッドバイ」を読む』の書評に書いたことだが、アイリーンが夫の居場所を探してもらおうとしてマーロウを訪ねた先は、オフィスではなく自宅だった。久しぶりに続きを書いてみようと思い立って、原文を読むと最初にそう書いてある…
午前11時のリッツ・ビヴァリー・ホテルのバー。マーロウは、人と会う約束でここに来ている。壁一面のガラス窓からプールが見えている。マーロウは飛び込みをする娘を欲望を感じながら眺めている。それまでとは明らかにちがう展開への予感を感じさせる。「…
第12章は、マーロウが自宅の郵便受けに手紙を見つける場面からはじまる。原文は次の通りだ。“The letter was in the red and white birdhouse mailebox at the foot of my steps.A woodpecker on top of the box attached to the swing arm was raised and…
第7章は殺人課課長によるマーロウ尋問の場面。例によって挑発に乗った課長は、マーロウの思うつぼにはまってしまう。グレゴリアスという課長は暴力に訴えるしかない愚鈍な刑事の典型として描かれている。翻訳上の異同はあまり面白いところが見つからないの…
ティファナからの帰り道、マーロウはドライブの退屈さを嘆く。そのなかで、夜の港町のロマンティックさと自分の生活を対比させ、次のように語る。 “But Marlowe has to get home and count the spoons.” 清水訳は「だが、マーロウは家へ帰らなければならない…
さて、第5章である。 最後に飲んでから一月後、朝の五時にテリ−がやってくる。コートに帽子、そして手には拳銃という古いギャング映画のような格好をして。この“Old-fashioned kick-em-in-the teeth gangster movie"もよく分からない。スラングなんだろうが…
第4章は、有名な「夕方、開店したばかりのバーが好きだ。」から始まるレノックスの長台詞で幕を開ける。この台詞を読んで、開けたばかりのバーを訪れたファンも多いにちがいない。もっとも、本にあるように午後四時では勤め人には難しかろう。マーロウのよ…
第3章は、テリ−とシルヴィア・レノックス夫妻の再婚を紹介する新聞の社交欄記事の文体模倣で始まる。彼らの再婚を伝える社交欄の記事を読むマーロウは、かなり腹を立てているがおおよそ事実だろうと考える。その後に、“On the society page they better be"…
マーロウがテリー・レノックスを二度目に見たのがクリスマス前のハリウッド・ブールヴァードだった。彼は何日も食べておらず、ぼろ屑同然の姿で登場する。マーロウは、警官に見とがめられたレノックスをタクシーに乗せて家に連れ帰ろうとする。 タクシー運転…
村上訳の『ロング・グッドバイ』を、久しぶりに再読した。前に出たとき、原書も買っておいたのだが、転勤と重なって、ゆっくり読むことができなかった。旧訳とは照らし合わせて読んだのだが、原書まで手が回らなかった。そこで、今度は、村上訳を読んだ後、…