青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

古書薀蓄ミステリ

積読してあった本を読んでしまったら、ストックがなくなってしまった。こういうときの頼みの綱である市立図書館が、運の悪いことに蔵書整理中とかで一週間の閉館中である。仕方がないので、以前に読んだ本を手に取ったところ、中身を忘れていたのだろう、ミステリなのに最後まで面白く読んでしまった。犯人くらい覚えていても不思議ではないのに。

どうして、そんなことが起きるかというと、実は古本屋が探偵役というのがミソのシリーズ物で、古書の薀蓄話を楽しむ方に気がとられ、本筋である犯人探しの方が片手間になってしまっていたらしい。ハードボイルド探偵小説もそうだが、犯人探しは、もちろんあるのだけれど、そんなことより探偵がどういうことを言い、どんな行動をとり、世間に対しどんな見方をするのかが興味の的になる。謎解きはディナーの後でいいのだ。

その本というのが、ジョン・ダニングの『死の蔵書』、そしてシリーズ第二作になる『幻の特装本』の二冊。代表作『死の蔵書』が面白いのは当然だが、ポオの『大鴉』を活字からデザインするというケルムズコッと・プレスの向こうを張った本作り職人の世界を舞台にした第二作も結構読ませる。ミステリに限らず、本好きという読者には垂涎の的といっても過言ではない。

シリーズ化には積極的でなかったダニングだが、何年かに一作といった寡作ぶりではあるが、第三作、第四作と同じ主人公による本の世界を舞台にしたシリーズ作品を物している。最新作『愛書家の死』は、既読だが、第三作、第四作が未読だった。近くの古本屋二軒を訪ねたが、大きいほうの古本屋に『死の蔵書』、『幻の特装本』が何冊も並んでいるばかり。

仕方がないので、ネットで古書を購入した。それが今日届いたのだ。まずは、第三作である『失われし書庫』から読み始めたところ。読み終えたら感想など書いてみたいと思っている。