青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

桜坂

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健康のことを考え、天気のいい日には毎日歩くことにした。家のある辺りは古くは長峰と呼ばれていたほどで、間の山という山の尾根づたいに旧道が通じている。見晴らしの良いのはけっこうだが、どこへ歩いていっても、帰りは上りとなる。運動になることはたしかだ。
さて、吉野の桜には早すぎたが、この地の桜は早散りはじめている。歩き出す肩のあたりにはらはらと桜の花びらが降りかかる。満開の桜も佳いが、散り初めるころの桜もまた風情がある。旧道から大学駅伝で最終区の選手が走る切り通し道に通じる道に、昔は両側に桜が植えられていた。何度も繰り返し舗装されたことで根に雨水がとどかない所為だろう、桜の多くは枯れ、今では見るも哀れな様になっている。道沿いに永らく放置されていた空き地に近年新しい家が建った。芝生の庭に一本の枝垂れ桜が今年もきれいに花をつけた。根の廻りにそこだけ丸く切石が敷かれているのが見える。この桜の育つのが楽しみだ。
倭姫命宮の参道を抜け、美術館前の坂道に出た。一面に散り敷いた桜の花びらが坂道を埋めつくしている。あとでカメラを持って来ようと思いながら坂道を下った。通りがかりの年配の女性に「桜も終わりですね。」と話しかけられた。「そうですね。」と軽く会釈しながら返事した。
物見遊山で遠くまで出かけずとも、桜ならこの国にはどこにでも咲いている。観光バスのやってこない自分たちのために咲いている桜を愛でたいと思う。そんな思いで家にとって返し、撮影したのが上の写真である。満開の桜を見るなら四月初旬だろうか。言い忘れたが、ここは観光バスも停まる、知る人ぞ知る名所でもある。