青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

ただいま厳重警戒中

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天気がいいので車を洗った。拭くピカで磨き上げたら、どこかに出かけたくなった。

昨日テレビで「ブラタモリ」を見ていたら、横山展望台からサミット会場になる賢島がよく見えた。聞くところによると、全国の警察官の一割がこの地方に集結しているとか。今日あたりから会期中は、自動車の使用を控えるようにというお触書が、そこここに掲示してある。そんな時に、わざわざ出かけるのも顰蹙ものだが、ものものしい警備というのも一度は見ておきたい気がする。こんな経験滅多にないのだ。

高速を朝熊で下り、朝熊道から鳥羽に出た。鳥羽からパールロード経由で志摩に出る。途中鳥羽展望台で休憩。駐車場に迷彩を施した陸自の車両が数台並んでいた。屋根の上には大きなアンテナが回転していた。ロイヤルホテル近くの橋を渡ると一気に警察車両が増えてきた。

パルケ・エスパーニャ前を通り過ぎ、賢島を示す標識が出てくるところで最初の検問。ここではバンタイプの車だけが止められ、後部ドアをあけて調べられていた。147はパス。どこに行くというあてもないままに、賢島方面に車を走らせていると、ここから賢島という道には検問所があって、用のないもの通しゃせぬ、という雰囲気がぷんぷん伝わってくる。住民でないからIDカードは持っていない。横目で通り過ぎた。

近くにバウムクーヘンの美味しい洋菓子屋があるのを思い出し、せっかくなので、バウムクーヘンを買い求めた。そこから、横山は遠くない。ついでに寄って帰ることにした。安心していたら、横山方面に向かう道で思わぬ検問。鹿児島県警の若いお巡りさんが、窓を叩き、「すみません。お座りになったままでけっこうですので、後ろのドアをあけて中を見せてもらってかまいませんか」と、あくまでにこやかに民主警察であることを意識させながら、初めての検問。

後ろにはさっき買ったバウムクーヘンしか入っていない。「ご協力ありがとうございました」とていねいに頭を下げてもらった。ずいぶん教育が行き届いている。近ごろ、こんなに丁寧に応対してくれるところはなかなかない。ほとんど車も通らない道をそのまま走るとビジターセンターに出た。山道をもう少し車で走ると展望台の駐車場に出た。

昨日のテレビのせいか、けっこう人が来ている。テレビ・クルーまで来ていて、サミットについてインタビューをしている最中だった。遊歩道を登っていくと海が見えた。リアス式海岸で有名な英虞湾である。サミット会場のホテルも一望の下に見えている。なるほど、ここは警備しなければならないはずだ。

妻がお巡りさんと並んで写真を撮りたいというので、聞いてみるように言った。若いお巡りさんは照れ笑いを浮かべながら、「すみません、職務中ですので」と、やっぱり断られた。ヨーロッパでは、喜んでいっしょに入ってくれたのに、と妻は言うが、ここは日本だ。日本のお巡りさんは真面目なのだ。新潟県警のお巡りさんも感じがよかった。

それにしても、ものすごい警察官の数だ。まるで、クーデターか戒厳令下にある国のようではないか。こんなに伊勢志摩に集まっていて、他県は大丈夫なんだろうか、と心配になった。それとも、ほんとうは日本の国では、警察官はそんなにいらないのかも。権力にはむかったり、大衆行動に出る群衆もいない。どこの国よリ治安はいいのだ。停止しても電力が足りている原発と同じで、お巡りさんがそんなにいなくても地方警察の仕事はなりたっているということなのだろう。

それにしてもパールロードのガードレールは全部新調されており、潅木類はばっさばっさと伐られていた。舗装もしなおされ、この近辺でしばらく道路関係の仕事はないだろう。これから先どうやって行くのか心配になった。これだけの人を動員し、金を使い、いかほどの成果があるのだろう。我々下々のものはお祭り騒ぎでもよいが、政(まつりごと)に携わる人々はお祭りで済まされてはたまらない。で、サミットにはいったい何が期待されているのか、その辺はメディアを見ててもあまり伝わってこない。ま、何を言っても後の祭りか。