青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

2013-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『書楼弔堂 破曉』京極夏彦

うらやましいような身分である。労咳を疑い、妻子を残して家を出たものの、実は風邪をこじらしただけで、恢復後もせっかく借りたのだからと、そのまま賄いつきの田舎家に独り暮らし。御一新以来四民平等とはいえ、もとは旗本高遠家の嫡男。少しばかりなら蓄…

『黄金の盃』ヘンリー・ジェイムズ

表題の「黄金の盃」とは、作品冒頭に登場し、後半のヤマ場に再登場する水晶でできた大振りの杯に鍍金を施した品である。見かけは豪華でいかにも贈り物にふさわしい品に見えるのだが、かすかにひびが入っているため何かの拍子に落としでもすれば、そこから割…

『使者たち』ヘンリー・ジェイムズ

ヘンリー・ジェイムズの代表作であり、「二十世紀文学の巨峰」とも称される長篇小説である。晦渋で難解なことで知られるヘンリー・ジェイムズの小説だが、読み始めてすぐに意外にも読みやすいという印象を受けた。一年にわたって毎月雑誌に連載されたため、…

『鳩の翼』ヘンリー・ジェイムズ

さすがに時代がかっている。美しく賢いが、家柄や財産のない若い女が、おのれの財産であるところの美貌と知性をつかって、社交界の仲間入りを果たし、財産を手にした上で、やはり、美男子で人好きはするが財産のない青年と結婚するために、策略の限りを尽く…