青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『祖国』上・下 フェルナンド・アラムブル 木村裕美訳

<上・下巻併せての評です> ピレネー山脈の両麓に位置してビスケー湾に面し、フランスとスペイン両国に跨がるバスク地方。古くから独自の言語、バスク語を話す民族が暮らす土地だが、現在は国境によって北はフランス領、南はスペイン領に分断される形になっ…

『過ぎにし夏、マーズ・ヒルで』エリザベス・ハンド 市田 泉 訳

世界幻想文学大賞受賞作である中篇三篇、ネビュラ賞を受賞した短篇一篇を収録したエリザベス・ハンドの傑作選である。ネビュラ賞とあるからには、ジャンル的にはSFに括れるのだろう。その分野にあまり詳しくないのは確かだが、それにしても、どれも今まで知…

『複眼人』呉明益 小栗山智 訳

海の上をぷかぷか浮きながら漂う島といえば、我々の世代は『ひょっこりひょうたん島』を思い出すが、時代が変われば、物事は変わるものだ。近頃では廃プラスチックが寄り集まってできたゴミが島となって漂う。「二〇〇六年ごろネットで、太平洋にゆっくりと…