青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『ゴーレム100』 アルフレッド・ベスター

西暦2175年。カナダからサウスカロライナ州にかけてのびる<北東回廊>はスラムと化していた。なかでも旧ニューヨーク地区は<ガフ(でまかせ)>と呼ばれ、ありとあらゆる悪徳がはびこる無法地帯となっていた。ただ、そのジャングルは常時死と隣り合わせで…

『天国でまた会おう』 ピエール・ルメートル

第一次世界大戦後間もない頃の話。戦地で埋められた死体を掘り起こし、遺族の待つ地方の墓地に葬るという施策が立てられた。ところが、それを請け負った業者が、死体が物言わぬのをいいことに、杜撰きわまりないやり方でそれを行なったことが発覚し世間を騒…

「ニコ、そんなに太ったかなあ?」

血液検査の結果、数値が安定したので、前々回の通院日から点滴をはずして投薬のみの治療に切り替わっていた。それはいいのだが、もうこれで安心かと思った次の通院日の前夜、妻が後肢の異変に気がついた。肢に力が入らないのか、時おり腰がぐにゃっとくずお…

『迷子たちの街』 パトリック・モディアノ

まずは二度読んでほしい。初読時に読み過ごしていた人名や住所、年月日といった、一見細々と感じられる記述に何度も立ちどまり、作者が行間から目くばせしているのに気づくはずだ。訳者は「訳者ノート」の中でうまい比喩を用いている。初めの読みは助手席か…

『第二次世界大戦1939-45』 上中下 アントニー・ビーヴァー

1939年ドイツ軍のポーランド侵攻から1945年原爆投下による日本の無条件降伏に至るまでの第二次世界大戦を編年体で書き綴ったノンフィクションの労作である。一冊約五百ページが三冊という量にまず圧倒されるが、よく知られる政治家や軍人にスポットをあて、…