青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『ボドキン家の強運』P・G・ウッドハウス 森村たまき 訳

気の利いた会話、自立した女性、という設定に風変わりな人物が加わって騒動を巻き起こす、映画でいうなら、スクリューボール・コメディ。ウッドハウスが二度にわたり、脚本家としてハリウッドに招かれていた三十年代は、その全盛期。三組の男女の結婚をめぐ…

『砂漠で溺れるわけにはいかない』ドン・ウィンズロウ 東江一紀 訳

何ごとにも終りがある。というわけで、これがシリーズ最終巻。最後になって一人称の探偵が話者を務めるハードボイルド小説のスタイルが戻ってきた。そうは言っても、カレンを話者にしてみたり、脇を務める登場人物の書簡、電話の録音、日記をそのまま本文に…

『ウォータースライドをのぼれ』ドン・ウィンズロウ 東江一紀 訳

中国四川省やネヴァダの草原を舞台にした前二作と比べると、ずいぶんスケール・ダウンしたものだ。カレンの部屋や、ホテルの一室、キャンディの家といった狭苦しいところに、女性三人が閉じこもって、ガールズ・トークに精を出し、酒を飲んで大騒ぎするとこ…

『高く孤独な道を行け』ドン・ウィンズロウ 東江一紀 訳

浮浪児あがりの青年が、育ての親が見つけてくる簡単な仕事を引きうけては、いつのまにか大事件に巻き込まれる、というお馴染みのシリーズ第三作。第一作はイギリス、第二作は中国と世界を股にかけてきたが、今回はアメリカに戻る。だが、地元ニューヨークで…