青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『十六の夢の物語』ミロラド・パヴィッチ 三谷恵子 訳

『十六の夢の物語』とあるとおり、夢や、予兆、記憶、相似といった互いに異なる時代や場所で起きた複数の事象の間にある奇縁を主題にした作品が選ばれている。パヴィチは文学史家でもあり、セルビア文学史の大冊も刊行している。その該博な知識を駆使して、…

『ヴィネガー・ガール』アン・タイラー 鈴木潤 訳

ケイト・バティスタは二十九歳。ボルティモアのジョンズ・ホプキンズ大学で自己免疫疾患の研究に勤しむ父と十六歳の妹の三人暮らし。妹が生まれてすぐ母が死んでからは家事全般を受け持ち、近くのプリスクールで四歳児を担当するアシスタントを務めている。…

『泥棒はライ麦畑で追いかける』ローレンス・ブロック 田口俊樹 訳

一冊の本が、その人の人生を変えるなんてことがあるだろうか。そんなことはないなんて言えるのは、きっと大人だけだ。十七歳のころだったら、ひょっとしてそういうこともあるのかもしれない。いや、きっとあるにちがいない。だって、本人がそう語っているの…

『泥棒は図書室で推理する』ローレンス・ブロック 田口俊樹 訳

ローレンス・ブロックの名を知ったのは彼の編集した『短篇画廊』がはじまり。続編の『短篇回廊』を読み、その実力のほどを知った。そして、三巻本の『BIBLIO MYSTERIES』の序文で杉江松恋氏が、ローレンス・ブロックの作品として挙げていたのが、本作と『泥…