青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『許されざる者』上下 辻原登

日露戦争前夜の明治三十六年(1903)三月、紀伊半島の南に位置する森宮の港にひとりの男が帰ってくる。男の名前は槇隆光。元森宮藩藩医の四男で アメリカで学位を取得後カナダで診療経験を積み、帰朝後森宮で開業していた。貧しい者からは金を取らず、金持ち…

『父、断章』 辻原登

自伝的な素材を生かした短編をそろえた短編集。作家自身に限りなく近い「私」が登場し、主な舞台は郷里の新宮である。それでは作品が事実に基づいているかといえば、首を傾げねばならない。辻原登は、そんなに簡単に素の自分を語るようなタイプの作家ではな…