青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『アヴィニョン五重奏Ⅳセバスチャン』ロレンス・ダレル

『アヴィニョン五重奏』も四巻目。前作「コンスタンス」で予告された「手紙」が物語の鍵を握ることになる。アッファド宛のその手紙とは、グノーシス主義の供犠としての「死」が許されたことを示すもので、本人だけが知ることができる死の日時が記されている…

『闇の中の男』ポール・オースター

これもまた、作者の言う「部屋にこもった老人の話」系列のひとつで、五作目に当たるこの作品が最後の作品になる。主人公の名はオーガスト・ブリル。「元書評家で七十二歳、ヴァーモント州ブラトルボロ郊外に、四十七歳の娘、二十三歳の孫娘と暮らしている。…

『モンフォーコンの鼠』鹿島茂

オノレ・ド・バルザックといえば、一作品の登場人物を他の作品でも使い回す「人物再登場法」を駆使し、総体として『人間喜劇』という一大世界を創りあげた19世紀パリを代表する大文豪だが、そのバルザック本人や関係者、さらには作中人物や友人ヴィクトル…

『元気なぼくらの元気なおもちゃ』ウィル・セルフ

期待にたがわぬウィル・セルフ本邦初の短篇集。多くの作家の短篇を集めたアンソロジー『夜の姉妹団』で一篇読んだだけだが、妙に心に残るものがあったのがウィル・セルフという作家だった。巻末の邦訳リストにあったこの本が図書館で見つかった。「奇想コレ…

『古代の遺物』ジョン・クロウリー

『エンジン・サマー』、『リトル、ビッグ』で知られるSF、ファンタジー界にとどまらないジャンル横断的な作家ジョン・クロウリーのおよそ四半世紀にわたる短篇の中から12篇を発表年代順に配列した著者最新の日本オリジナル短篇集。寡作、しかも代表作『…

『夜の姉妹団』柴田元幸編訳

少し前の本だが、図書館の新着図書のなかにジョン・クロウリーの『古代の遺物』があるのを見つけ、検索をかけたら、表題作の短篇が収まった柴田元幸訳編による、この一冊が引っかかってきた。スティーヴン・ミルハウザー、スチュアート・ダイベックはじめ、1…