青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『パーフェクト・スパイ』ジョン・ル・カレ

たいていの小説は読み飽きて、手を出す気にもなれなくなったすれっからしの本読みが最後に手を出すのがスパイ小説。それもジョン・ル・カレの書くそれ。そんな気がしていた。主義主張や理想をふりかざして世の中を変革しようとしたり、どこまでも真理や真実…

『シングル&シングル』ジョン・ル・カレ

時はペレストロイカ時代。旧ソヴィエト連邦が瓦解し、すべての利権がなだれをうって新しい権力者の手の内に落ちようとしていた嵐のような時代だ。英国商社シングル&シングルの重役がトルコの丘の上で殺される場面で物語は幕を開ける。シングル社が契約して…

『スマイリーと仲間たち』ジョン・ル・カレ

ジョージ・スマイリーは、元英国情報部の現地指揮官。冷戦時には有能なスパイとして情報部を指揮していたが、世界情勢は緊張緩和(デタント)へと舵を切り、顔ぶれを一新したホワイト・ホールは情報戦も英米協調をうたい、かつてのような英国独自のスパイ網…

『カールシュタイン城夜話』フランティシェク・クプカ

丘の上に聳える灰色の城塞が眼に浮かんだ。坂を下りながらふりかえると、武骨な石造りの砦は翼を広げた鷲のように、谷に向かってその一部を中空にせり出していた。プラハ郊外の寒村に中世の姿を今にとどめるカレルシュタイン城。よく覚えている。張出し窓の…