青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『質屋探偵ヘイガー・スタンリーの事件簿』 ファーガス・ヒューム

シャーロック・ホームズがベイカー街で名をはせていた頃。いかがわしい外国人がたむろする辺りに一軒の質屋があった。老店主の死後、店を預かるのはまだ二十代の一見してジプシーとわかる娘。この娘、美人であるだけでなく、店に持ち込まれる品物の目利きに…

『本を読むひと』 アリス・フェルネ

パリ郊外のもとは野菜畑だった荒れ地におんぼろのキャンピングカーがずっと停まっている。そこに住んでいるのは、長い髪にロング丈のスカートをはいた女たちと裸足で走り回る子どもたち、そして一日中何もせずに話し込んでいる男たち。彼らは「ジプシー」。…

『プレイバック』 レイモンド・チャンドラー

朝の六時半、男の家に電話がかかってくる。男は私立探偵。弁護士から仕事の依頼だった。八時に到着する列車から女を探し、宿泊先を突き止め、報告せよというのだ。ディオールで身を固めた秘書から小切手と女の写真その他を受け取り、駅に向かう。女は駅で別…

『平家物語』 池澤夏樹=個人編集 日本文学全集09

こういっては何だが、本人の書いた源氏物語を材にとった小説『女たち三百人の裏切りの書』より面白かった。現代語訳とはいっても、本来語り物である『平家物語』を、カギ括弧でくくった会話を使用し、小説のように書き直したそれは、もはや別物だ。加筆した…

『マカロンはマカロン』 近藤史恵

『タルト・タタンの夢』、『ヴァン・ショーをあなたに』に次ぐシリーズ第三弾。商店街の中にある小さなビストロを舞台に、訳あり客の持ち込んだトラブルや悩みをシェフが解決するアームチェア・ディテクティブ・ミステリ連作短篇集である。店の名前はビスト…

『博物館の裏庭で』 ケイト・アトキンソン

イングランド北部に位置する古都ヨーク。時は1951年。今しも、一人の女の子が母親の子宮に着床しようとしている。ユーモアたっぷりに語るのは、なんとその産まれてくる赤ん坊で名前はルビー。母親はバンティという家事に追われる主婦。父親のジョージは…

『日本近現代史入門』 広瀬 隆

2017年、年が改まって早々、坂本龍馬が暗殺される五日前に書いた手紙が発見された。福井藩の重臣に宛てた手紙で、謹慎中の三岡八郎(後の由利公正)を「新国家」の財政担当者として出仕させることをせかす内容である。竜馬が明治政府を「新国家」と評し…

『神よ、あの子を守りたまえ』 ト二・モリスン

少年期に負ったトラウマが、その後の人生を送る上で、人にどれだけの影響を与えるものか。登場人物のそれぞれが皆、過去に傷を負っている。傷を負いながらも、たくましく生きるタフな女性もいる。主人公の親友ブルックリンや、旅先で出会った少女レインのよ…