青玉楼主人日録

仮想の古書店「青玉楼」の店主が、日々の雑感や手に入った新刊、古書の感想をつづります。

「トリミング」

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今日はこの前病院にいってから一週間。毎日ちゃんと薬を飲ませたので、そろそろよくなったかと思っていたのだが……。培養の結果、ニコのボツボツは真菌のせいだと判明。先生が言うには、この際バリカンで毛を刈って、シャンプーしたほうがいい、という無情なもの。長毛種のヒマラヤンである。毛を刈ってしまったら、目もあてられない有様になるのでは、というこちらの心配など知ったことか。まずは病気を治すのが第一、といういかにも医者らしい考え方である。

真菌の原因は何ですか?という問いには「ストレスでしょう」という答え。もともと、ニコのような種の子は、多くの猫と暮らすには向いていない。それが人間の都合で、他の猫と生活していたことで、免疫力を下げ、子猫や老猫がかかりやすい皮膚糸状菌症に感染した、というのが医者の診立てである。幸い、今日ならトリマーの手が空いているというので、そのままニコを病院に預けて帰宅した。処置が終わったら電話してくれるので、迎えにいく手はずである。

丸刈りにされたらさぞ寒かろうというので、帰りにいきつけの店で、まるまって寝られそうなグッズを探すのだが、いまひとつ気に入らない。ほかの店をあたることにして家に帰り、まずは掃除機で徹底的に部屋を掃除した。家に来てすぐに入ったキャットタワーのマットは特に念入りに掃除機をかけ、その後日光消毒。午後二時に終わる予定というので、連絡を待つ。

二時半、電話があった。急いで駆けつける間も、妻とどんな姿になっていても、それで症状がよくなるのだから、となぐさめあう。病院に着くが、自動ドアは閉まっている。本当なら午後は四時から開くのだ。インターフォンで連絡すると、ドアが開いた。キャリーを預け、ニコが出て来るのを待つ。ドキドキである。診察室から「どうぞ」と声がかかり、ニコと対面。毛は短く刈ってもらってあるが、短毛種の猫のようで、想像していた因幡の白兎状態ではなかった。長い毛がなくなったことでひとまわり小さくなってむしろ可愛くなった。

「おとなしくしてましたか?」と訊くと、「シャンプーの水音にはびっくりしてジャンプしましたが、その後はシャーという威嚇もなく、おとなしくしてました」と、トリマーさんの言葉に、ほっと胸をなでおろした。やはり、毛を刈ってみると、腋の下のような目に触れないところにもボツボツがあったようで、刈ってよかったようだ。ニコは、思っていたより元気だったが、話ではシャンプーのストレスで吐いたりすることもあるらしい。気をつけてくださいとのことだった。

キャリーに入れて帰る間、ニコは往きより大人しかった。家に着いても、すぐに椅子の下にもぐって例の上目遣いで、恨めしそうにこちらを見ることもなく、いつものように、否いつも以上に元気にそこらあたりを歩き回っていた。薬をまぶした夕食もしっかり食べて、こちらは拍子抜けした気分。人間の夕食が終り、家中が落ち着いた今は、ようやくぐっすりと眠っている。次は十二日後、また診察を受けに行く。トリミングのせいで、顔と尻尾以外は短毛種になったようなニコ。小さくなったようでとても可愛い。